会社員の副業は雑所得と事業所得のどっち?申告前の判断手順

業務委託で副業する会社員向けに、雑所得と事業所得を分ける帳簿、収入規模、継続性、営利性の確認方法を、判断表と相談用メモで解説します。

会社員が業務委託の副業を始めると、「少額だから雑所得」「開業届を出したから事業所得」と決めたくなります。しかし、どちらも一つの事実だけで決める方法ではありません。

先に結論を言うと、取引を記録した帳簿書類を保存したうえで、活動が社会通念上、事業といえる程度かを実態から判断します。収入300万円は一律の境界線ではなく、開業届も所得区分を確定させる書類ではありません。

この記事は、原稿、デザイン、動画編集、Web制作などの業務委託で継続的に報酬を得るケースを想定します。アルバイトとして給与を受け取る場合は、まず給与所得として確認してください。

4段階で事実を確認する

順番確認すること残す証拠
1雇用か業務委託か契約書、給与明細、請求書
2取引を記帳し、書類を保存しているか売上・経費帳、請求書、領収書、入出金明細
3独立して営利目的で反復・継続する活動か営業記録、契約期間、取引件数、価格設定、作業時間
4規模が僅少ではないか、赤字改善に取り組んでいるか年別売上、本業収入との比率、収支計画、改善記録

国税庁の所得税基本通達は、事業所得かどうかを「社会通念上事業と称するに至る程度」で判定するとしています。通達の解説では、営利性・有償性、継続性・反復性、自分の計算と危険で企画・遂行しているか、労力、設備、職歴や生活状況などを総合して考えると説明しています。

「週何時間なら事業」「取引先が何社なら事業」という単独の基準はありません。上の表は、結論を選ぶチェックリストではなく、実態を説明する資料として使います。

帳簿書類の保存だけでは決まらない

国税庁の通達では、取引を記録した帳簿書類を保存していない場合、収入が300万円を超え、かつ事業所得と認められる事実がある場合を除き、業務に係る雑所得に該当するとしています。

一方、帳簿書類を保存していれば自動的に事業所得になるわけでもありません。国税庁の解説は、保存がある場合でも、次のようなときは個別に判断するとしています。

  • 収入が僅少と認められる場合
  • 例年赤字で、赤字を解消するための営業などを行っておらず、営利性が認められにくい場合

解説では、収入が例年300万円以下で、主たる収入に対する割合が10%未満なら、収入が僅少と認められる場合の例を示しています。「例年」はおおむね3年程度です。これは300万円以下なら必ず雑所得、10%以上なら必ず事業所得という判定式ではありません

初年度で過去3年の実績がない場合も、ほかの事実と合わせて判断する必要があります。

二つの例を同じ順番で整理する

例1:休日に単発でデザインを受注

  • 年2件だけ知人から依頼され、年間売上は8万円
  • 翌年以降の受注活動や継続契約はない
  • 入金と経費は表に残し、請求書も保存している
  • 専用設備はなく、本業給与が生活の中心

帳簿書類があることだけで事業所得とは決まりません。この例では、反復・継続性、規模、営業活動などを確認すると、業務に係る雑所得として検討する事実が多いと考えられます。

例2:自分で受注・価格設定し、継続してWeb制作

  • 複数社と継続契約を結び、自分で営業と価格設定を行う
  • 毎月取引があり、売上拡大の計画と営業記録がある
  • 制作機器を用意し、定期的に相当の時間を使っている
  • 売上・経費を帳簿へ記録し、契約書や請求書を保存している

この例には独立性、営利性、継続性などを説明する事実があります。ただし、会社員との兼業であることや帳簿があることだけで結論は出ません。実際の規模や生活状況を含めて総合判断します。

税務上の違いから区分を選ばない

確認点事業所得業務に係る雑所得
所得の基本計算総収入金額 − 必要経費総収入金額 − 必要経費
青色申告対象になり得る。別途、期限内の承認申請と要件が必要対象外
赤字一定の損失は損益通算の対象になり得る他の所得と損益通算できない
記録事業所得を生ずべき業務には記帳・保存義務がある前々年の業務収入が300万円を超える場合などに追加要件がある

赤字を給与と相殺したい、青色申告特別控除を使いたい、という結果から事業所得を選ぶことはできません。先に活動実態から区分を判断し、その区分に適用できる制度を確認します。

活動実態から事業所得として確認できた後は、2026年に副業を始めた人の青色申告承認申請期限で、開始日から提出日を計算してください。

雑所得でも仕事に直接必要な経費を差し引く基本計算はあります。反対に、事業所得でも私生活の支出を自由に経費へ入れられません。副業の必要経費を判断する3つの基準で、支出ごとに仕事との関係と証拠を確認してください。

「300万円」を3種類の話で混同しない

  1. 通達では、帳簿書類がないときの例外に「収入が300万円を超え、かつ事業所得と認められる事実がある場合」が出てくる
  2. 通達の解説では、収入が例年300万円以下で主たる収入の10%未満なら、収入が僅少と認められる場合の例がある
  3. 業務に係る雑所得では、前々年の収入が300万円を超えると、現金預金取引等関係書類を5年間保存する義務がある

いずれも「今年の売上が300万円を超えた瞬間に事業所得へ変わる」というルールではありません。また、会社員の20万円ルールは申告要否に関する別の基準です。副業所得20万円以下の確定申告の判断手順と分けて確認してください。

申告前に作る相談メモ

  • 仕事内容と、雇用・業務委託のどちらか
  • 開始日、継続予定、契約期間、年間の取引件数
  • 年間売上と所得、本業収入に対するおおよその割合
  • 価格を誰が決め、損失ややり直しを誰が負担するか
  • 営業方法、翌年の受注計画、赤字なら改善のために行ったこと
  • 週・月の作業時間、使っている設備
  • 作成している帳簿と、保存している契約書・請求書・領収書
  • 開業届や青色申告承認申請書を提出した場合は、その日付

売上・経費・領収書を月1回で整理する方法で記録をそろえ、上の項目を一枚のメモにまとめます。

帳簿書類は所得区分を自動的に決めるものではありませんが、取引が増えて表計算での記録や証憑との照合が負担になった場合は、会計ソフトを使う方法もあります。まずは会社員の副業向け会計ソフト3社比較で、表計算を続ける場合も含めて比較してください。

freee会計も、売上・経費の記録と確定申告をまとめる候補の一つです。申し込む前に、現在の料金、対応する申告方法、必要な機能を公式ページで確認してください。会計ソフトが雑所得・事業所得を自動的に判定するわけではありません。

ソフトを使う場合も、契約、活動実態、帳簿書類を自分で説明できる状態にする必要があります。完成した相談メモと契約書類を持って税務署または税理士へ相談すれば、活動の実態を具体的に伝えられます。

今日行うこと

  1. 契約書で給与か業務委託かを確認する
  2. 売上・経費の記録と証憑がそろっているか確認する
  3. 売上、取引件数、作業時間、営業活動を相談メモへ記入する
  4. 開業届、300万円、制度の有利不利だけで区分を決めていないか見直す
  5. 結論が出なければ、資料を示して申告前に税務署または税理士へ確認する

所得区分は名前を選ぶ作業ではなく、その年に実際に行った活動を証拠とともに説明する作業です。活動が変わった年は、同じ区分でよいかを改めて確認してください。

参照した公式情報