会社員の副業報酬が源泉徴収されたら?入金差額の記録と確定申告

業務委託の副業報酬から10.21%が差し引かれた会社員向けに、対象報酬の確認、請求額と入金額の記録、支払調書、確定申告での精算までを具体例で解説します。

業務委託の副業で「請求書は11万円なのに、入金は9万9,790円だった」というとき、差額を値引きや振込手数料として処理してはいけません。支払者が所得税と復興特別所得税を源泉徴収している可能性があります。

先に結論を言うと、売上は手取りの入金額ではなく、差し引かれる前の報酬額で記録し、源泉徴収税額を別項目で残します。年末には支払者別に合計し、確定申告をする場合に精算します。

まず確認する3項目

入金が請求額より少なかったら、推測で記帳せず、契約書、請求書、支払通知を並べて次を確認します。

  1. 報酬の仕事内容が源泉徴収の対象か
  2. 源泉徴収の計算対象額と税率はいくらか
  3. 差額に振込手数料や相殺された費用も含まれていないか

支払通知に内訳がなければ、支払者へ「請求額、消費税、源泉徴収税額、振込手数料、実際の振込額の内訳」を確認します。

業務委託なら必ず10.21%引かれるわけではない

国税庁が示す対象には、原稿料、講演料、デザイン料、翻訳料、特定の資格者への報酬、モデルへの報酬などがあります。一方で、業務委託という契約名だけを理由に、あらゆる報酬が一律に源泉徴収されるわけではありません。

また、支払者にも条件があります。法人などが対象報酬を個人へ支払う場合は源泉徴収が必要ですが、給与を支払っていない個人が支払者である場合など、国税庁が示す例外もあります。

確認する事実見る書類判断できないときの質問
仕事内容契約書、発注書、納品物国税庁のどの報酬区分に当たるか
支払者契約先の名称・区分法人か個人か、源泉徴収義務者か
差引額支払通知、入金明細所得税・復興特別所得税はいくらか
消費税請求書報酬と消費税を明確に区分したか

入金額が請求額の約89.79%だからという理由だけで、源泉徴収と断定しないでください。対象外と思われる報酬から差し引かれた場合や、対象報酬なのに差し引かれていない場合は、先に支払者へ計算根拠を確認します。

10.21%の計算例

原稿料やデザイン料など、国税庁が示す一般的な計算では、1回の支払金額が100万円以下なら次の式を使います。

源泉徴収税額 = 源泉徴収の対象額 × 10.21%

求めた税額の1円未満は切り捨てます。1回の支払金額が100万円を超える場合は、100万円を超える部分に20.42%を使う二段階の計算です。外交員報酬など別の計算方法がある報酬もあるため、10.21%をすべての仕事へ当てはめないでください。

請求書で消費税を分けた例

報酬10万円、消費税1万円を明確に区分して請求し、税抜報酬10万円を源泉徴収の対象とする例です。

項目金額
報酬100,000円
消費税10,000円
請求額・売上の合計110,000円
源泉徴収税額(100,000円 × 10.21%)10,210円
振込額99,790円

国税庁は、報酬と消費税が明確に区分されていれば、報酬額だけを源泉徴収の対象として差し支えないとしています。区分されていなければ、原則として消費税を含む金額が対象です。上の金額は区分した場合の例であり、どの請求にも同じ振込額になるわけではありません。

売上を9万9,790円にしない

この例では、入金額だけを売上にすると、実際の請求額11万円より売上を少なく記録してしまいます。簡易な管理表でも、次のように分けます。

取引日取引先売上源泉徴収税額入金額証憑
2026-08-31A社110,000円10,210円99,790円請求書・支払通知・通帳

会計ソフトの勘定科目や入力方法はソフトや申告区分で異なりますが、少なくとも「差引前の収入」「源泉徴収税額」「実入金額」を分け、3つの合計がつながるようにします。振込手数料が別に差し引かれた場合は、その金額も混ぜずに記録します。

源泉徴収のある取引が複数社に増え、請求額・税額・入金額の照合を表計算だけで続けるのが負担になった場合は、会計ソフトを使う方法もあります。会社員の副業向け会計ソフト3社比較で、表計算を続ける場合も含めて管理方法を比べてから判断してください。

マネーフォワードの会計・確定申告サービスも候補の一つです。申し込む前に、現在の料金、入力方法、対応する申告方法を公式ページで確認し、源泉徴収税額を含む自分の取引を無理なく記録できるかを確かめてください。

会計ソフトを使う場合も、支払通知と実際の入金を照合する作業は残ります。最初の1件で3つの金額がつながることを確認し、その後も月ごとに締めます。具体的な照合方法は副業の売上・経費・領収書を月1回で整理する方法で確認できます。

支払調書を待つ前に月ごとに記録する

「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」は、一定の報酬を支払った側が税務署へ提出する法定調書です。国税庁が示す提出範囲や期限は支払者側のもので、報酬を受け取る側の売上記録を年末まで先送りする理由にはなりません。

支払調書が手元にある場合も、それだけに頼らず、毎月の請求書、支払通知、通帳を照合します。年末には取引先別に次を合計してください。

  • 差し引かれる前の報酬・売上
  • 源泉徴収された所得税と復興特別所得税
  • 実際の入金額
  • 未入金の請求がある場合はその金額

支払調書や年間支払明細と自分の集計が一致しない場合は、対象期間、未払報酬、消費税、振込手数料が混ざっていないかを支払者へ確認します。

源泉徴収されたら必ず還付、ではない

源泉徴収は、その副業について納める税額が10.21%で確定したという意味ではありません。確定申告では、本業の給与や副業の所得、所得控除などから年間の税額を計算し、すでに源泉徴収された税額と精算します。

その結果、納め過ぎなら還付されることがありますが、ほかの所得や控除によっては追加で納付することもあります。「10.21%引かれたから全額戻る」「源泉徴収済みだから申告不要」とは判断できません。

一定の給与所得者に関する20万円の基準と、還付を受けるために確定申告する場合の扱いは副業所得20万円以下なら確定申告は不要?で整理しています。

確定申告をすると決めた後は、源泉徴収された副業報酬をe-Taxへ入力する順番で、本業の給与、副業の収入・必要経費・源泉徴収税額を分けて入力します。

年末までにそろえるチェックリスト

  • 契約書で仕事内容と報酬条件を確認した
  • 請求書で報酬と消費税の表示を確認した
  • 支払通知で源泉徴収税額と振込手数料を確認した
  • 差引前の売上、源泉徴収税額、入金額を別々に記録した
  • 取引先別・年別に3つの金額を合計した
  • 支払調書や年間明細があれば自分の記録と照合した
  • 確定申告の要否と、申告する場合の精算を確認した

最初に行うことは、入金差額を経費へ入れることではありません。支払者から内訳を受け取り、差引前の売上と源泉徴収税額を分けて記録することです。判断できない報酬区分や計算差額は、契約書と明細を用意して税務署または税理士へ確認してください。

参照した公式情報